201503.24
「一物四価」という言葉をご存じでしょうか? ひとつの不動産には「地価公示価格」「相続税路線価」「固定資産税評価額」「取引(実勢)価格」という4つの異なる価格があるという意味です。
なぜひとつの不動産に4種類もの価格があるのか。それは不動産が非常に金銭的価値の高い財産だからであり、また用途によって金銭的な資産価値を生むかどうかが異なるからでもあります。
この3つの金額は、それぞれ次のような際に用いられます。
○公示価格(地価公示価格)・・・国土交通省 土地鑑定委員会が「一般の土地の取引価格に指標を与え、公共用地の取得価格の算定に資するとともに、不動産鑑定士などが土地についての鑑定評価を行う場合の規準等となることにより、適正な地価の形成に寄与することを目的として」毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するもの。
○路線価(相続税路線価)・・・相続税・贈与税を算定する際の基準となる評価額。公示価格の80%に相当する。
○固定資産税評価額・・・固定資産税を課税するための基準となる評価額。公示価格の70%に相当する。
この3種類の価格に、実際に土地の取引が成立した際の「取引価格」を加えて一物四価と呼ばれます。
この4つの価格のうち、実際の不動産の売買に則している価格は「取引価格」のみです。公示価格は不動産鑑定士などの専門家が「この不動産の価値はこれくらい」と見積ったものですから正当性は信頼できますが、不動産の売買は売手と買手双方の合意によって価格が成立するもので、需要と供給のバランスにより取引価格は公示価格よりも上下します。たとえば売り主側に何かの事情があって「急いで不動産を売却したい」というようなケースでは、売却価格を相場よりも少々安めに設定し、買手を見つけやすくするということもあるでしょう。
また不動産は、同じ道路に面する隣接した土地であっても、その形状による使いやすさなど、微妙な違いによって価値が上下します。公示価格は一定の基準値を示すものであってすべての不動産を査定したものではありませんから、個々の不動産すべての正しい価値に公示価格があてはまるわけではありません。
公示価格は土地の売買を前提に価格の定められた基準ですが、相続税路線価と固定資産税評価額はそれぞれ相続税・贈与税(国税・徴税者は国税局または税務署)と固定資産税・不動産取得税・登録免許税(地方税・徴税者は地方自治体)との課税額を算定するための評価額です。つまりもともと公示価格とは評価の目的が異なっており、監督官庁も異なっているという点に着目すべきでしょう。
また、固定資産税評価額は3年に1回しか評価されません。この期間の間に実勢価格が大きく変動する可能性もあり、固定資産税評価額と実勢価格とに大きな乖離が発生しないよう、それらを見越して公示価格の70%という余裕をもった数値が採用されています。
管轄裁判所と
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