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201708.23

競売物件評価方法の1つである収益還元法(直接還元法とDCF法)についての解説

皆さんは、競売物件の入札を検討される際に、3点セット評価書の『評価額算出の過程』の『収益価格の試算』の項目をどの程度ご覧になっていますでしょうか?実はこの項目には3点セットの中でも不動産投資的な観点から特に重要な情報が詰まっていて、しっかり読み込んでいくと他では手に入らないような貴重なお宝情報が手に入る極めて美味しい箇所なのです。

この『収益価格の試算』の項目は、不動産評価のプロである不動産鑑定士が執行裁判所から選任された競売評価人として、収益還元法を用いて当該物件の収益価格としての資産価値を評価したプロセスが記載されている部分です。収益還元法には大きく分けて直接還元法とDCF法の2つのやり方があるのですが、とりわけDCF法が用いられている場合が特にお宝情報としての情報価値の高いといえます。

なぜなら、DCF法が採用されている場合、不動産鑑定士が収益価格を算出するにあたり当該物件を投資用不動産と仮定してはじき出した将来のキャッシュフローや数年後の予測転売価格の数値が評価書上に記載されているからです。落札後のインカムゲインや出口戦略としてのキャピタルゲインまで視野に入れた上でこれから入札戦略を練ろうとする方にとってみれば、プロ視点での落札後の想定賃料、年間純収益、将来の予測転売価格がすべてフリーコストで一手に数値的に把握できてしまうわけで、この点が美味しい箇所としての所以です。

それでは、このお宝情報へのアクセスを容易にすべく、以下順に収益還元法の具体的中身について解説していきたいと思います。

収益還元法とは

収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される収益力に基づき不動産価格を求める手法で、原価法、取引事例比較法と並び代表的な不動産の価格算出法の1つです。将来の見込み収益が大きければ大きいほど物件価格も高めに算出されます。将来の収益力に着目して不動産価格を決定するので長期保有を前提としたワンルームマンション、1棟アパートRCマンションなど投資用不動産の融資審査の際に繁用されますが、競売マンション投資で成功するという目的においても、是非ともマスターしておきたい知識です。

収益還元法には、前述のとおり直接還元法とDCF法の2つのやり方がありそのどちらも競売物件の評価において用いられているので、この記事では両方の概念、仕組みについて説明していきます。

直接還元法とは

直接還元法とは、1年間の純収益を還元利回り(キャップレート、Capitalization Rate)で割り戻して、収益還元価格を求める方法のことをいい、下記の式によって表されます。

年間純収益(NOI or NCF)÷ 還元利回り = 収益還元評価額

たとえば、年間純収益が300万円であった場合に還元利回りを6%に設定して割り戻すと、300 ÷ 6/100 = 5000 で、その物件の収益還元評価額は5000万円となります。もし還元利回りを8%に設定したなら3750万円、逆に4%に設定したなら7500万円になるという話です。

このように、直接還元法においては対象物件の収益性がそのまま物件の評価額に反映されるので、需要者側の視点に立って投資採算性に見合った適正な物件評価額が算出できるのが大きな特徴です。もっともその分だけ、還元利回りをどの程度の水準に設定するのかが評価上大変重要な要素となってくるとも言えます。

また、年間純収益(Net Operating Income)とは、賃貸収入などの年間に得られる総収入(Gross Potential Income)から、維持管理費、修繕費、公租公課(個都税)、損害保険料、空室損失、貸倒れ損失などの年間に掛かる総費用(借入金や減価償却費は考慮しません)を差し引いた数値で、下記の式で表せます。

年間家賃収入(GPI) - 年間必要経費 = 年間純収益(NOI)

なお、参考までに、年間純収益から修繕費などの資本的支出(Capex)を控除した利益を正味純利益(Net Cash Flow)と呼び、NCFを年間純収益と考えこれを還元利回りで割り戻して評価額を求めるやり方もあります。一般投資家サイドではNOI基準でプライシングすることが多いのに対し、最近の不動産鑑定評価においてはNCFを純収益と考えてプライシングするのが基本となっているようです。

還元利回りとは

還元利回りとは、周辺の類似物件の取引事例や地域性、市場データなどから求められる物件の適正な想定実質利回りをいいます。言い換えるならそれは、永久的に自分が保有することを前提に一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものです。

還元利回りが高くなれば不動産の収益還元評価額が下がる関係なので、還元利回りには将来の純収益の変動リスクが織り込まれていると考えることができます。言い換えるならば、一般的に言って還元利回りが高いということはその物件のリスクも高いということです。逆に、還元利回りが低いということはその物件の家賃も収益還元評価額も高いということを意味するわけで、都心の一等地の物件ほどこの傾向が強いです。

なお、還元利回りについて解説しているサイトによっては表面利回りを還元利回りとして採用して解説しているサイトも見受けられますが、割り戻す対象を年間家賃収入から年間必要経費を除外した年間純収益とする以上、論理的整合性を保つためには想定表面利回りでなく想定実質利回りを還元利回りとして採用すべきでしょう。

還元利回りの算出方法

還元利回りは、物件の種類や立地条件などによって異なりますが、おおむね一般的住宅では5~7%、事業用は8~10%が目安とされています。とはいっても、そもそも具体的にどのようにして算出するのでしょうか?


この点、不動産鑑定評価基準(第7章)には、還元利回りを求める方法として次のものが挙げられています。

①類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
この方法は、対象不動産と類似の不動産の取引事例から求められる利回りをもとに、取引時点及び取引事情並びに地域要因及び個別的要因の違いに応じた補正を行うことにより求めるものです。市場の実勢を重視するので、市場がバブルもしくは過熱気味のときにはそれを反映した数値になりやすい点には留意が必要です。

②借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法
この方法は、対象不動産の取得の際の資金調達上の構成要素(借入金及び自己資金)に係る各還元利回りを各々の構成割合により加重平均して求めるものです。不動産購入者の資金調達コストに着目した方法です。

③土地と建物に係る還元利回りから求める方法
この方法は、対象不動産が建物及びその敷地である場合に、その物理的な構成要素(土地及び建物)に係る各還元利回りを各々の価格の構成割合により加重平均して求めるものです。

④割引率との関係から求める方法
この方法は、割引率をもとに対象不動産の純収益の変動率を考慮して求めるものです。還元利回りが将来収益の変動予測並びに予測の不確実性を含むものであるのに対して割引率はそれらを含まないものである点に着目した手法です。この方法は、純収益が永続的に得られる場合で、かつ純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効とされます。

⑤借入金償還余裕率の活用による方法
不動産市場における資金供給者(金融機関等)の視点に重きを置いた方法です。この方法では、対象物件から得られる収益のみを借入金の返済原資として考えるので、自己資金還元利回りを考慮しません。

その他、不動産鑑定評価基準では、還元利回りを求める方法について、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等の活用も挙げられています。


還元利回りは、経済状況や対象不動産の種類、周辺環境、その他資料収集の困難性等に連動して変動する指数なので、実務上、上記のような数種類の方法の中からより説明妥当性が高いものを採用することが多く、また併用される場合もあります。実際の算出にあたっては、空室、賃料設定、敷地・延床面積などの規模、建物の築年数と構造、物件のグレード、建物の管理・修繕状況など、さまざまな要因が絡んできます。

直接還元法のデメリット

直接還元法の欠点として、初年度の年間の純収益が次年度以降も永続的に得られるということを前提とし、毎期ごとの経年劣化による物件価値の減少に伴う賃料の低下、空室リスク、金利変動リスクなどが計算式上個別に想定されていない点が挙げられます。確かに還元利回りの設定には将来の純収益の変動リスクとその不確実性が織り込まれていると考えますが、結局それは大雑把な織り込み方であり、還元利回りから各々のリスクパラメータに因数分解できるわけではありません。

また、新築物件の評価の際には、いわゆる新築プレミアムが上乗せされた高めの家賃設定で収益価格を算出してしまうと、将来的に家賃収入が低下した場合に収益価格の下落幅が拡大してしまう欠点もあります。

DCF法とは

DCFは「Discounted Cash-Flow」の略で、不動産の保有期間(数年間)に得られる純収益を現在価値に置き直したものとその期間終了時における復帰価格(売却によって得られると予測される価格)を現在価格に置き直したものを合計することで、不動産の収益価格を求める手法です。直接還元法が年間賃料収入からの『逆算』のイメージなら、こちらは完全に『足し算』のイメージです。

DCF法は、直接還元法と異なり、1年ごとの純収益の査定を行うことにより、経過年数に合わせて発生が予想される諸費用(大規模修繕費用など)を査定に盛り込みます。そのため、毎期の純収益の増減を正確に把握することができます。こうした毎期の予測された純収益や復帰価格をきめ細かく明示し足し算して評価額を決定する点が、直接還元法よりも予測精度に優れているとされ、不動産ファンドの隆盛とともに今日では不動産の証券化に係る鑑定では必須の評価方法となっています。ただし、その分求め方も複雑になります。

具体的な計算方法

今後、執筆追加予定。

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